2017年6月29日木曜日

ついに成立した民泊新法! 得をするのは誰だ!?



去る6月9日、参議院本会議にて、住民宿泊事業法(いわゆる、民泊新法)が可決され、成立となりました。


宿泊業界に身を置き、その上でいろいろと好き勝手に意見を発信している僕が、業界にとって超重大な事象であるこの件についてを放置したまま、月をまたぐべきではないなぁと思いまして。このブログの更新、今月は今のところ一度のみですしね。


というわけで今回の話題は、僕の立場から見たこの“民泊新法”の、是非についてです。



ついに成立した民泊新法、その詳細をざっくりまとめますと、

① 事業者は都道府県への届け出が義務に。
② 事業者は、宿泊者名簿の作成と標識の掲示が義務に。
③ 家主不在型は、宅権業者への管理委託が義務に。
④ 年間営業日数の上限は、180泊
⑤ ④は、自治体ごとに条例で短縮が可能。
⑥ 違反者には、六ヵ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される。

です。


・・・・すっ・・素晴らしい!!!

 個人的には④の営業日数の上限は、30泊や60泊程度がよかった(海外で民泊を許容している国の多くが、そんな日数制限です)のですが、それ以外はケチの付け様がありません!!

ホステル業界にいる友人の何人かともこの話題が出ましたが、皆、軒並み喜んでおりますね。もちろん、民泊そのものを全く認めたくない、という気持ちはありますが。しかし、時代の流れには僕らもアジャストする必要がありますし。今現在、闇で民泊事業をやっているチートな連中が、すでに取り返しのつかない数で日本中に湧いていますし。


ここで、この法律ができることにより、誰が得して誰が損するのかを、いろいろな立場ごとのハッピー指数で表そうと思います。宿泊業界や民泊の問題に、全然くわしくない人たちにもわかりやすく理解できそうな感じで!




【① 既存の宿泊業界(ホテルやホステル業界に携わる者々)】

ハッピー指数:80

民泊が全面禁止になれば、もちろん指数は100でした。しかし、この法律により営業日数の上限が設けられ、違反者に対するペナルティも明確になりました。これまでのような、“違法だけど罰則規定がないし、捕まってもたいしてヤバくない”という、闇民泊事業者に舐められまくりで爆発的に増えまくりの状況は、少なくとも脱すると予想され、充分に満足のできる法律となりました。



【② すでに闇民泊をやっていた個人(家主不在型、賃貸物件)】

ハッピー指数:0

これまで、このパターンで闇民泊をやっていた者には、この法律ができることにより、今後はガクブルの生活が待っております。賃貸物件での民泊事業をするにあたり、貸し主からきっちり許可をもらっており、周りの住民も理解を示している、そんな特異な状況でない限りは、確実に続けられません。さらには、今後は宿泊者名簿を作る必要があるわけで、“ゲストとは全く会わずに鍵BOXの暗証番号だけ伝えておしまい”の仕組みの継続が、難しくなります。それらすべてを踏まえれば、ほとんどは辞めると思いますし、辞めずに闇で続けるのだとしたら、ただのアホです。

そんなこれまで、近隣住民や合法で宿泊業を営む者々への迷惑を顧みず、コソコソとセコく違法行為をしていた彼らに、僕はここでハッキリ言います。「ざまぁみろ」です。



【③ すでに闇民泊をやっていた個人(家主不在型、所有物件)】

ハッピー指数:10

②の者々の多くが、今後は民泊業から逃げて行くと思われます。なので、ライバルが一気に減るという意味でビジネス的にはプラスの要素があり、指数は0ではありません。しかし、180日という上限と、自治体への届け出が義務になったことによる“ちゃんと所得税を払わなくちゃね”、標識の提示が義務になったことによる“近隣住民にバレバレだね”、さらには管理委託が義務になったことによる“管理業者に利益の一部を吸い取られちゃうね”といった、今後の多すぎるマイナス面を含めると、ハッピー指数はこんなもんです。これまた、「ざまぁみろ」です。



【④ すでに闇民泊をやっていた個人(ホームステイ型、賃貸物件)】

ハッピー指数:0

実はホームステイ型の民泊のことは、既存の宿業界の者々は、そんなに悪くは思っていません(僕としても、「ざまぁ」の対象ではありません)。上記②③の家主不在型は、投資型とも呼ばれ、要はただの金儲けであり、そんな連中に我々の大切な商売が荒らされるのは非常に腹立たしいですし、もれなく全員捕まって欲しいのですが。ホームステイ型からは“外国人と交流したい”や“観光客をおもてなししたい”等の、真摯さや責任感を感じますのでね(中には、“嫁探し”を目的とする不届き者もいるようですが笑)。しかし、彼らも②同様、周りの許可や理解の上にないことが多いと思いますし、それらの面倒や登録手続きの全てをクリアしてまでも続けたいとは考えていないでしょう。なので、ほとんどの方が辞めると思います。



【⑤ すでに闇民泊をやっていた個人(ホームステイ型、所有物件)】

ハッピー指数:30

このパターンは、まさに“外国人と交流したい”タイプの方が多いでしょうし、180日の上限も、お金儲けを目的としていない限りは、そんなにはマイナスにならないかと思います。しかし、“所得税を払わなきゃね”と“近隣にバレちゃうね”は、彼らにとっては大きな負担でしょうから、これを機に辞める、という人はそれなりにいると思います。僕としては、このケースの方に対してのみ、「継続してもいいんじゃないですか?」と思いますが。



【⑥ これから新規参入する個人(賃貸物件)】

ハッピー指数:0

②と同じく、こんな人はただのアホです。「これから個人で、賃貸物件で民泊を始めるぞ!」と意気込んだところで、もう闇でコソコソとはできないのです。いったいどこの大家がそれを許可し、どこの隣人がそれを歓迎するのでしょうか? そんな無理スジの物件環境を探すのは、明らかに時間のムダです。こんな人がもし周りにいたら、正直に言って、僕は笑っちゃいます。



【⑦ これから新規参入する個人(所有物件)】

ハッピー指数:30

所有物件ですから、②や⑥のように大家の許可が必要になることはなく、やる気になれば合法のビジネスとして、すぐに始められます。しかし、近隣住民は歓迎しますかねぇ? 「近隣なんて知ったこっちゃない」という人も中にはいるでしょうが、これってそれなりにハードルが高いことのような気がします。そもそも、これまでは違法であったが野放し状態で、闇でやって儲ける連中がそれなりにいた中、素直に“合法になるまで待っていた”民泊業への参入志望・物件所有者が、そんなにいるとは思えません。まぁ、後述の⑧に委託するケースは多くなりそうですが。



【⑧ これから新規参入する企業】

ハッピー指数:90

今回、民泊新法が成立したことで、一番喜んでいるのは間違いなく彼らですね。企業ですから、これまでは彼らのほとんどは民泊ビジネスに参入していませんでした。違法行為で、リスクが大き過ぎましたからね。しかし、これからは合法のビジネスということで、アパマンショップやレオパレス21等の大手の不動産業者を中心に、一気に参入が始まります(多くの企業が、表明済みです)。自社で管理or所有している大量の物件の中にある、借り手のいない部屋や、買い手のいない家などの“困っているもの”を主に、これからは民泊用の物件という扱いに鞍替えさせます。なんなら、一つの物件を民泊として扱いつつ販売も継続、といったことまでするかもしれません(売れた場合には、民泊はストップ)。さらには、これまで闇で家主不在でやっていた連中(③)から、今後は管理委託を受けることにもなります(当然、利益が発生します)。180日という上限設定のみ、彼らにとってはガッカリでしょうが、それ以外は満点でしょう。




これらをまとめると、

ハッピー指数
  
 90: これから新規参入する企業
 80: 既存の宿泊業界(ホテル・旅館・ホステル等)
  
 30: 闇民泊をやっていた個人(HS型、所有物件)
 30: これから新規参入する個人(所有物件)
 10: 闇民泊をやっていた個人(家主不在型、所有物件)
  
  0: 闇民泊をやっていた個人(家主不在型、賃貸物件)
  0: 闇民泊をやっていた個人(HS型、賃貸物件)
  0: これから新規参入する個人(賃貸物件)


となります。要は、これから届け出が義務になり、企業が一気に参入する状況で、“個人”で“賃貸”物件でやる民泊ビジネスには、プラスの面は全くないのです。そもそも、年間で180日までしか営業できないわけですから、物件を借りてそれを又貸ししたところで、まともな利益が出るわけがないのです。そんなの、小学生にだってわかることですよね。

なので、今後も賃貸物件で民泊業を続けよう(始めよう)という者々は、180日以下の規定を守るはずがありません。規定を守らないということは、もちろん自治体に届け出るはずもありません。



今回成立した、民泊新法の内容で喜べるのは、上記のように「これから新規参入する企業」と、僕ら「既存の宿泊業界」だけです。政府(政治家)はこの法律を作るにあたり、不動産業界と旅館業界の両方面から、強いロビー活動を受けました(そのあたりの事情も僕はそれなりに詳しいのですが、ここでは割愛します)。その結果、なかなかバランスのとれた、両方の業界が満足できる法律になったと思います。

逆に言うと、こういった巨大な業界組織にばかり恩恵のある法律なわけで、個人に対して利があるようには全くできていません。この法律ができたことで明らかに苦しい立場になったのは、これまで個人で闇民泊ビジネスをしていた者と、これから個人で民泊ビジネスを始めたいと考えていた者です。政府は現金ですねぇ。そういうロビー活動的な影響力のない者々には、とことん冷たいです(笑)。

よって今後は、民泊を個人でやっている者、これからやりたい者は、辞めるか、諦めるか、違法のリスクを背負いながら闇で続けるかの、どれかしかないでしょう。そして続ける者は、これまで以上に、周りの目を気にしながら、コソコソすることになります。通報されたら、おしまいですからね。明確な罰則規定のある、明らかな犯罪行為ですからね。


あとは、いかに政府(保健所、警察)が本気で違反者の摘発に取り組むか、それだけが問題です。ただし、今後は不動産業界と旅館業界の、両面からの監視プレッシャーが彼らに向かいますから、見せしめ的な要素も含めて、政府はそれなりに定期的に彼らを摘発するのではないでしょうか? 法律が施行された後にも、変わらず闇民泊が横行するようでは、政府に対する批判が沸き上がるでしょうし。警察官さんたち、がんばってくれることでしょう(と、期待しています)!




2017年6月1日の時点で、日本全国にあるAirbnbの登録物件数は、およそ4万8千。東京都内には、1万7千。都内においては、その内の少なくとも7割、1万2千件が、家主不在型(投資型)の民泊です。

民泊新法は、2018年1月からの施行になるようです。それまでは、およそ半年。半年後からは、民泊は個人のビジネスではなく、完全に企業優位のビジネスになります。個人では、リスク過多すぎて、お金儲けの面においては利点が全くありません。


今、闇民泊を営んでいる個人事業者たちの内、どれほど多くがこれを理解し、廃業を選択するのでしょうか? または、どれほど多くが理解に至らず、無謀で愚かな継続をしてしまうのでしょうか? 





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