2017年9月12日火曜日

沈没船に、手ブラで乗り込む者たち。



最近、このブログは映画等の話題が多く、ホステル経営については、ほとんど書いていませんでしたね。まぁ、これまでさんざん「この業界、供給過多すぎてヤバいよ!」と書いてきましたので、そういう内容に飽きていた、というのはあります。読む方からしても、「またかよ・・」って感じだったと思いますし。



しかし我がYAWP!は9月に入り、思いっきりヒマになっておりまして。なのでネットでいろいろな宿のブログを読んだり、予約の入り状況を調べてみたり等の、「他はやって行けてるのかな?」な活動をしてみまして。普段から読んでいる他宿さんのブログは、いくつかありますけどね。今回は、さらに掘り下げるような形で。


すると、どこもかしこもが凄まじい“予約が入っていない”っぷりで、けっこうな衝撃を受けました。僕が調べるのは小さな宿のみで、ベッド数が50を越えるような中〜大規模な宿は検索すらしていませんが。小規模宿のオーナーさんたちは、今は(というか相変わらず)みんな苦しい思いをしているというのが、よくわかりました。

ウチのように、わざわざ毎月、稼働率を公表している宿など他には皆無ですし、「ヤバいです」や「経営難です」といったド正直すぎる内容のブログは、どこにもありませんでしたけどね。しかし、「バイトをしようかと検討しています」等、やんわりと苦しい胸の内が出てしまっているところはありました。


一方で、「これからゲストハウスをやりたい!」と意気込む者々のブログも改めて大量に発見しましたが、それらを読むと相変わらず、本当に、ほんっっっっとうに・・・現実をわかっていない!! 中には、“業界がすでに飽和状態で、既存の宿々は軒並み苦戦している”・・というのを理解している(書いている)者もいましたが、そんな人でも結局のところでなぜか、「でも、私ならばうまく行く自信がある!」となっている。


この、既存の宿々のオーナーさんたちのブログと、「これから宿をやるぞ!」と意気込んでいる人たちのブログの、印象の差が激しすぎる。現実とファンタジーの乖離、とでも言いますか。



ところでそれに連なる話として、先日、ウチに開業の相談に来た方がおりまして。僕が先日、

持ち物件での開業 or 賃貸ならば自己資金が1000万以上、
その上で稼働50%、値段2000円のオペレーションを組める

・・・以外の方は、お断りします。

と書いた影響か、相談者はしばらくはいなかったんですけどね。



彼に話を聞くと、

・賃貸で物件を探している
・自己資金500万+融資500万で、開業資金は1000万の予定
・稼働は70%予測、値段は3000円に設定

とのことで。

・・・オゥ、全然、僕の提示した条件を満たしていないじゃんか・・・。



しかし、彼なりにロジックはしっかりしており、

「融資が500万ならば、月にたった10万の返済で5年以内に返せます」
「ベッド数は10を想定。タクロウさん(僕)のところ(YAWP)は、15。15ベッドで50%ならば、10ベッドだと75%だということですよね。で、少し控えめにして70%」
「ベッド数をしぼると、一台あたりのベッドを広くすることができ、その分快適さが増すので、3000円設定でも充分に予約は入るはずです!」

そして、

3000円×10(ベッド)×30(日)×0.7(稼働率)で、月の売上げは63万円。

そこから①家賃20万②借金返済10万③サイト手数料8万④光熱&通信費4万⑤諸経費1万⑥人件費・・は完全ワンオペにするのでゼロ

を引くと、残りは20万。

 「20万円あれば、なんとか食べていけます!!」



・・・とのことで。彼曰く、僕のこのブログの過去記事を参考にしてメチャクチャ考えに考え抜いてこの数字に達したとのことでして、僕は正直、それに関しては嬉しかったです。ここまで本気で、オペレーション設計をして来る人はそんなにいませんし。それに、彼のロジックは、それなりに説得力も伴っています。


しかしそこには、ツッコミどころがいくつかあります。まず、月に20万が成立したとしても、それは一月30日完全ワンオペで休み無く働いて、の数字です。日給で6666円。一日12時間強働くとしたら、時給だとたったの500円です。しかも、彼の試算した経費①〜⑥以外にも、経営する上での必然的な出費はまだまだありますので(これは僕も開業してから気付いたことですが)、この数字はさらに下がります。


また、僕が提示した値段2000円&稼働50%というのは、別にウチの環境や経営状況をベースにしているわけではありませんでして。

この業界の顧客(ゲスト)のほとんどは、
値段とロケーションを見て、宿を選びます。
値段を上げる分は、ベッドの質の良さで相殺され、稼働率は変わらない・・・とは、なりません。ベッドが広いかどうかなんてゲストはわざわざ調べてくれず、値段を上げれば単純に、それがそのまま稼働率の低下に繋がります。

というかそもそも、既存の宿々のほとんどはすでに、素晴らしく快適な、滞在環境を用意しています。その上で、今は2000円以下の宿が大量発生中なのです。


あくまで値段を基準に、稼働率&売上げの予測をする(キャパは15で)と、

値段    稼働率  一日の売上げ
1600円→60%  14400円
1800円→55%  14850円
2000円→50%  15000円
2200円→45%  14850円
2400円→40%  14400円

といった感じになる、ということです。そんな計算を元に、僕は2000円50%という数字を、提示しています。

さらにこの流れで3000円まで計算をすると、

2600円→35%  13650円
2800円→30%  12600円
3000円→25%  11250円

となります。仮に、彼の言う“ベッドが広くて快適そう”補正が全くない場合には、3000円設定にすると、稼働は25%ほどに落ち込むと予想されるわけです。


キャパ15で25%なら、キャパ10では37.5%になりますが、その計算はあまり意味がないですよね。とにかく、ベッド数に関係なく、仮に3000円設定にするとゲストは一日あたり4人くらいしか来ませんよ、ということです。“ベッドが快適そう”補正をムリヤリ発動したとしても、せいぜい+1で、5人。3000円×5人=15000円では、2000円設定の50%→15000円と、結局のところ何も変わりません。


そして、仮に一日の売上げが15000円だとすると、月の売上げは15000×30で、450000円になります。ここから、彼の計算をそのままなぞり①家賃20万②借金返済10万③サイト手数料6万(売上げ減の分は調整)④光熱&通信費3万(〃)⑤諸経費1万・・・を引くと、残るのはたったの5万円です。

家賃ー20万・借金返済ー10万の状態でスタートしても、経営は全く成り立たないということです。なので彼のこのケースは、持ち物件(家賃のー20万が消える)か、もしくは自己資金1000万以上=借金無し(返済のー10万が消える)の、どちらか一つだけでも満たしていないと、話にならないというわけです。


というわけで、僕の示した条件

持ち物件での開業 or 賃貸ならば自己資金が1000万以上、
その上で稼働50%、値段2000円のオペレーションを組める

は、根拠無しにテキトウに書いたわけではなく、僕なりにきっちりと計算をした上での、“最低限この状態でなければ確実に失敗しますよ”だということです。



この説明はもちろん、前述の“相談に来た”彼にも話しています(この内容をブログに書くことは、了承を得ています)。しかしそれに対しては、「でも、YAWPさんは2400円で70%じゃないですか〜」という彼の反応でして(まぁ、そりゃそうなりますよね)。ほんと、よくそこまで細かくこのブログを読んでいるもんだ・・・。


ウチはまず、キャパが12(時期によっては10)の設定で、稼働率も、キャパ設定に沿って計算しています。単純な計算として、キャパ12の70%は、キャパ15だと56%になります。

また僕は、これまでの実績を元に、“この期間は確実にゲストが少ない”という時期にはそれなりの頻度で、宿を閉めてお休みをいただいております。その分も、稼働率の計算には入っておりません。

仮に、ウチが休んでいた日=ゲスト0人だったとして、2017年1〜8月の総合稼働率を出すと、1391(全泊数)÷243(日)=5.72(一日あたりのゲスト数)、5.72÷12(キャパ)×100で、47.7。ウチがもし、休みが一切無く、キャパ12で完全に固定の宿だったという仮定で計算したとしたら、今年のこれまでの稼働率実績は、およそ48%だったということです。

そしてこれはあくまで、現状の話です。これから先はますます確実に、厳しさが増します。2000円50%のオペレーション設計の提示をしているのは、あくまで「今、開業するならば」です。来年には、1800円40%とか、そんな悲惨な状況になっているかもしれません・・・。



もはやこの業界は、ウチのような小さな宿は、賃貸物件かつ借金有りの状態では、生き残ることが出来ないのです。そんな脆弱な基盤の上では、このビジネスは、確実に失敗します。あなたがこの沈み行く船に乗り込むのなら、せめて浮き輪くらいは持って来ないとエラいことになりますよ、ということです。


前述の“相談に来た”彼には、いずれ開業のチャンスが来ればいいなと思いますし、違う業界に行くにしろ今のお仕事を続けるにしろ、このまま志を高く保ち、がんばってほしいと僕は思っています。




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